優游
型紙に合わせて革を裁断、できるだけ無駄の出ないようにするのだが状態の良い所を選ぶので、わずかしか製品に使えない。
トートバッグの手提げの部分を豆カンナで削りバフで磨く。
年季の入ったミシンで一気に縫い上げていく。昔のモノは丈夫だから、手放せませんとご主人。
大きな一枚の天然革から淡々と流れるように仕上がっていく。

清里は個性豊かなクラフツマンシップが宿る場所です。暮らすことや表現することを楽しみ、何かをわかち合い心を通わしていくという文化が、自然と共にある生活の中にいきづいています。『メリーマック』はそんな清里の片隅でモノづくりを続ける革製品のお店です。オーナーの石原さんのモノづくりやライフスタイルに以前から共感していた晴耕雨読スタッフが優游プロジェクトの「素敵なモノ」を探しに春の始まりとはいうものの、まだ雪の残る清里に向かいました。

「使い込む程に味が出てくる感じがいいね」と店内を見ていると天井から大きめなトートバッグが吊り下げられているのを発見。「あれ、いいね」と気に入ったところ、「これは試作品で商品ではないんですよ。でも、これを基にして新しくつくってみましょうか」と石原さんが提案してくれました。願ってもない申し出に感激。それでは…と私たちが出した要望は、デジカメ一台とA4のファイルも入れたいから物がたっぷり入る大きさがいい。物を多く入れた時に重いと大変だからバッグ自体の重さも検討したい。ショルダーとしても使いたいから持ち手の長さは調節可能に。男女兼用で使えるシンプルなデザイン。

素材やつくりの良さはもちろん譲れません。でもその辺はメリーマックさんにお任せすれば安心。その日私たちは石原さんと一緒に希望の革の素材と色を選び、デザインを決め帰路に就きました。

優游オリジナルトートバッグ製作の日。はやる心をおさえつつも時間より少し早めに到着。「さあ始めましょうか」と石原さんがまず革を裁断する工程から見せてくれました。目立つキズは避けて型紙を置いて切り取ります。裁断は全部の仕事がわかっていないと出来ない難しい作業なのだそうです。今回石原さんのアドバイスを得て私たちが選んだ革は、本体は牛革ヌメ革のWコガシ。Wコガシとはヌメ革にシワを出し、WAX加工した後摩擦を加え仕上げたものです。持ち手や縁、マチなどは牛革、ヌメ革オイルレザー。革を二種類選んだのには理由があります。Wコガシの独特な風合い、そして重量の軽さを取り入れ、力や摩擦がかかる部分にはヌメ革を用いることで強度を実現。何より二種類の革が持つ味わいのバランスが絶妙。使い込んだ後の表情の変化が今から楽しみです。

製作のすべてが石原さんの手仕事によって進みます。持ち手の部分ひとつ取って見ても、ざらざらする革の切り口にかんなや、やすりをかけ滑らかにし染料で仕上げていく。丈夫で持ちやすく見た目にもきれいに仕上げるためには、これ程多くの手間がかかっているのかと驚かされました。縫製にしてもそう。「バッグで一番こわれるのは糸のほつれだから、それを避けるために摩擦が多い部分は縫い目を表に出しません」と石原さん。また、サイドから底マチも一枚の革で出来ているので、つなぎ目がなく丈夫。その部分にヌメ革オイルレザーを使うことで、しっかりとバッグが自立することも可能にしています。「バッグの口の部分は物の出し入れがしやすいようにファスナーではない方がいいですね。それでも口を閉じたい時のためにしっかりとしたマグネットを内側に付けておきます」と目立たないように付けてくれました。

生活の中に和紙があると気持ちまでやさしくなれる。

出来上がったバッグを工房の窓際に置き、自然の光に照らしてみた。「いいね」一同納得、笑顔で頷いた瞬間でした。



見本になったプロトタイプを基に素材や、大きさを検討。プロトタイプの革が重いため、丈夫で軽い革をチョイス。大きさも女性が持つことも考えて若干小さくした。
育てていく愛着。使い込むほどに自分のモノになっていく。

こんな小さな店も必要かなって思う。

「1980年に店を始めたころは自分の好きなモノばかりをつくっていて、それを気に入ったら買ってくれればいいという感じでした。今思えば一方的なモノづくりだったと思います。でも年をとるにつれて使ってくれる人の立場に立ったモノづくりをするようになりました。ニーズに応えるべく私も努力、勉強を重ねています。よくこだわりは何ですかって聞かれますが私には特にないんです。強いて言えばタンニンなめしを使うなど自然にやさしい天然素材を材料にしたモノづくりをしているところ、ぐらいですかね。相手の立ち場に立つ程、シンプルなモノづくりになっていくように感じます。「使う人が育てていってくれる」そういったモノをしっかりとした素材で、きちんとつくっていきたいですね。こういう小さな店も必要かなって最近思うんです。小さいからこそ小さな少ない要望にも応えていけますから」。

天然素材なので多少のキズもあります。色の出方も個々で微妙な違いがあります。しかしそれが年月と共に味になっていくでしょう。使う人によって育てられ、やがてなくてはならない愛着のあるパートナーに成り得るバッグだと思います。これこそ、手仕事の極みなのです。

商品詳細・ご購入はこちらから