庭先の練金術師たち、その素顔

だちばなし02:極めし者たちのディープなはなし

天野 「みんな売れっ子だから、こうして全員集まるのレアだよね」

市村 「千葉以来じゃない、4月?」

中村 「半年ぶりぐらい」

天野 「僕は個々でみんなとしょっちゅう会ってるけどね」

小佐野「俺が終わらないとみんな現場は入れないから」

週末、住宅街のとある一軒家。質実剛健な出で立ちの五人の男たちが、小洒落た庭先でたむろしていた。これから賑やかにバーベキューでも始めるのかと思いきや、庭のあちこちを見て回りながら「このベンチが云々」「柵のネジが云々」と、まるで我が子を愛でるように語らっていた。

天野 「この庭はキッチンからの眺めがすごくいいんだよ。庭は外で見るより家の中から見ることの方が多いから、中からどう見えるか計算してある」

市村 「知らなかった」

天野 「あんまし、こういうことみんなに言わないからね」

小佐野「完成したのを見ると、俺何やったっけってくらい植栽がメインになってるし。天野先生の手にかかると、普通の庭と違ってみんな消されちゃう」

天野 「いや、小佐野さんがコンクリートの裏にきっちりシートを貼ったりしてくれてるから、あのベンチの裏の花壇にも土がしっかり入るんだよ。僕が10言わなくても、わかってるから安心してその後の作業ができるんだよ」

市村 「僕らはみんなケイちゃんの手下なんで」

天野 「いやいやいや。中村さんなんて、特にそうだよ。すぐ察して作業する。この木のフェンスもネジが見えるの嫌だから見えないようにして、って注文したらフェンスに溝を入れてネジに木の柱を被せて見えないようにしてくれてる」

中村 「それしかやりようがないからね」

天野 「こういう風に色々無茶を言えるのも、このチームだから言えるんだよ。結局、図面を作ってもいざ作業すると現場で修正が入るし。庭の円の部分も当初の設計とは違ってる」

土橋 「だから図面見ないよね」

天野 「図面は見ましょう(笑)」

土橋 「大丈夫、形になってるじゃん」

天野 「まぁ、僕の感覚がわかってくれてるから大丈夫なんだけど。みんなうちの現場楽しいでしょ?」

市村 「楽しいよ。下ネタ言ってもオーケー」

天野 「こんなフランクに作業できるメンバー、なかなかないよ。道端の植栽の作業とかしてハイヒールの音がすると、みんな意識して背筋がピーンとなる現場、そうそうないって」

中村 「お前はもうハイヒールの音だけで年齢と体型当てるじゃん」

天野 「そっから僕のこと認めてくれるようになりましたよね(笑)」

中村 「そりゃもう、それは感心する」

天野 「庭づくりは想像力だからね。大事」

中村 「振り向いて見る必要ないから助かるよ。何十代の小太りです、とか。作業効率が上がる」

天野 「ひどい話っすね」

庭づくりという響きだけ聞くと、華やかで優雅な世界が想像される。まさか住宅を彩る素敵な庭園が男たちの下心によって支えられているとは、家主は夢にも思わないだろう。しかし、男手だけで施工する中、女性的な繊細さを生み出せる秘密は意外にもこういったところにあるような気がする。

天野 「あの福岡駅前の空間ディスプレイ行った時もひどかったよね。大の大人がまぁ、はしゃいじゃって、はしゃいじゃって。ねぇ」

土橋 「え?なんかあったっけ?」

市村 「あの駅前で待ってたのはいいんですか?」

土橋 「何もない、何も失敗してない」

天野 「まぁ、こういう雰囲気だから僕もやりやすいんだけどね。正直、このメンバー以外でやりたくないし。それでお客さんを待たせちゃってるのもあるけど、僕はこのチームで作りたい。仲間を増やせば出来ることが増えるかもしれないけど、図面にはない感覚をわかってくれるのは、ここしかないと思ってる」

市村 「さすが、クライアントをパトロンにして好きな庭を作ってるアーティストは言うことが違うね」

天野 「違う違う(笑)クライアントと打ち合わせして、要望を聞いて、それを元に色々提案したりして作っていくものだから。趣味とか生活スタイルから着想を得てるんだよ。ここの庭の施主さんは細かい希望がなかったんだけど、そういう部分を読み取ってイメージして提案した。頭にビジョンが浮かぶんだよね」

天野以外 「さっすが、聞いた今の?」

天野 「みんな、ここの現場やったよね?わかってるんじゃないの?」

土橋 「いや褒め言葉だよ、褒め言葉。最高の褒め言葉」

天野 「親方(中村)、ちゃんと首輪繋いでおいてくださいね」

市村 「いいチームだよ、ほんと」

天野 「でも最近はプライベートで会えなくなってるよね。昨日も中村さんとたくさんLINEしておいて、別の件で相談したっすよね」

土橋 「一緒にいてLINE来ると、チッチッて舌打ちしてるよ」

天野 「いや中村さんは俺にも『またケン(土橋)の野郎』って言ってるよ。ケイちゃん、もらってくんない?って」

中村 「でも、いらないっていうじゃん」

一同 「(笑)」

天野 「まぁ作品に出てるよ、こういう雰囲気は。やっぱ自分の世界観はここでしか作れない」

庭を考える人、下地を作る人、草木を植える人、木造建築する人。どこか一つでも足並みがそろわないと、誇れる庭を作ることはできない。互いを尊敬し、信頼できる仲間。華麗な庭園の奥に、作業服を纏う男たちの絆が垣間見えた。

このチームが海外に飛び立つ日を夢見て

天野 「お客さんもみんないい人だよね」

市村 「ヤードワークスさんは、敷居が高いセレブ専門」

天野 「そんなことないって。もう依頼があれば、喜んでいろんな庭を作るよ。ねぇ、ケンさん」

土橋 「俺たちは、結局ここでやってるんだよね。技術云々よりもまず、ハートでやってる」

天野 「みんな熱い気持ちで向き合ってるけど、あんまり意見がぶつかったりしないよね」

市村 「縦社会だから、ケイがこうと言えばこう!」

小佐野「図面とイメージができちゃえば絶対だもんね」

天野 「いや、そんなことないでしょ。女性のデザイナーの方が、そういうのが強い気がする。ただ譲れない部分はもちろん僕にもあるよ。毎回うまくいってるけど、それは僕がなんか違うな〜って思ったことを、しっかり擦り合わせできてるから。中村さんは特に感じ取ってくれる」

中村 「無言で、やれ!っていうのが伝わってくる」

天野 「小佐野さん、市村さん、ケンさんも、そうでしょ。ちゃんと、わかってる。僕のことよく見てるなぁって思う」

小佐野「そう、基本的には好きだから」

市村 「全然喋らんけど、小佐野さんもう飽きた?」

小佐野「身体動かしていないと、どうも調子出ない(笑)」

市村 「飲みに行くと変わっちまうのにね。」

小佐野「なっちまうね」

天野 「初めて小佐野さんと一緒に現場入った時も真面目そうだけど、こりゃ別の一面を持っているんじゃないかと思ったら、やっぱりありました!みたいな。市さんもなかなかのクセ者だったし、中村さんもお父さんみたいな感じで(笑)。こんな風に日本だけじゃなくて海外でもこのチームで仕事したいね」

小佐野「前から言ってる」

中村 「俺はヨーロッパ嫌い。アメリカでやれたらいいけど」

天野 「日本のガーデナー、造園家はガンガン海外へ出てる。自分はまだ声がかかるレベルに達していないから、そうなるように頑張らないと」

中村 「その前に土橋の飛行機嫌いをどうにかしないと」

土橋 「大丈夫、大丈夫」

天野 「ケンさん、大人が両手で手を握らないと乗れない」

小佐野「あれ上からワイヤーで吊ってるらしいっすよ」

土橋 「マジ?」

市村 「え、ケンさん飛行機怖いんすか」

土橋 「やばい、泣いたもん」

天野 「怖くて降りられないから、飛行機の荷物下ろすベルトコンベアから降りてくるくらい怖いみたい。中村親方、逃げないように首根っこギュッと掴んどいてくださいね」

中村 「ははッ」

土橋 「頑張るっす。近い将来、このチームが海外でやることになるだろうし」

小佐野「世界の天野だから」

天野 「いやいや、まだまだだよ」

小佐野「ビジョンが降って湧くような人が日本にとどまるわけがないじゃん。その設計に、俺らの技術が追いつくように頑張らんとね」

土橋 「まず図面みるところからだな」

一同 「(爆笑)」

庭づくりは何処でもできる。
でもこのチームでないと、できないものがある。
ユーモアと繊細さを併せ持つ彩り豊かな芸術品には、無骨な男たちの熱い想いが詰まっていた。
阿吽の呼吸が息づき、子供のような笑い声が朗らかに響く住宅街。
次にこの声を聞くのは、遠い海の向こうの庭先かもしれない。

それは、ともかく彼らのだちばなしは、今日もつづいているのだろう、
どこかの庭をつくりながら。

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