やまなしジビエは、まだまだ美味しく、 たのしくなる。

だちばなし04:極めし者たちのディープなはなし

良い肉・良いハンター・良いシェフ
最高なトライアングル

田川「五味さんとは長い付き合いだけど、まさか舞ちゃんもハンターになるって聞いた時はビックリしたなぁ…」

 「前までは滅茶苦茶反対していたのにね〔笑〕」

 「誠さんが獲ったお肉がいつもすごく良かったから、それ以上のものってどうやったらできるのかな、て思ったのがキッカケだったの」

「自然の楽園」という言葉がこれ以上はないくらいぴったりなグランピングリゾート「星のや富士」。やさしい初夏の木漏れ陽のシャワーを浴びながら、ジビエの食事を楽しむ“ハンター”五味夫妻が居た。ここで五味ブランドの鹿肉を手掛けているシェフ田川との会話がなんとも面白い。

 「ハンターとしてかくあるべし、て言うのかな。今はそれが分かるようになった」

田川「技術の他に、気の持ち方って大きいよね。銃を持つようになって初めて気づく誠さんの仕事への気迫とか」

 「うん、本当は“もっと事務とか家事とかでサポート頑張ろう”って言うのが普通なのかも知れないけど、自らハンターになってしまったという〔笑〕」

 「それにしても、星のやさんにゆっくりお邪魔するのも久しぶりです」

田川「そうですね、こうやって食事していただくのもね」

 「こんなステキなところに自分たちが獲った鹿肉が出されているって、いつも感動しちゃう」

田川「五味さんを紹介されて、届いたお肉を見た時は衝撃でしたよ」

 「衝撃っていうと?」

星のや富士 料理長 田川 貴章

田川「臭みもドリップ〔血〕も無いし、旨味も他の処理場とレベルが違いますもん。スキルの違いなんでしょうね」

 「それはあるかも。ハンターの腕で全部変わっちゃうので」

 「かなりのケアをしているよね。ストレスを与えないように」

 「だね。銃の場合には必ず頭か首を一瞬で仕留める。気づいたらこと切れているように。ワイヤーを極端に短く作るなど罠の掛け方にも気を使っているしね」

田川「それがあのすごい肉質に直結してくるのかぁ…」

 「鹿が一瞬でも嫌な思いをしないようにとハンターになってからも気をつけているの」

田川「ハンターとしてのメンタリティって、今は中々聞けないよね」

ハンター 五味 誠

 「ゲームハンターとミートハンターとの違いが大きいよ、やっぱり。楽しみのために狩りをするのでなくて、上質な肉を捕る職業としてプライドがある。人様の口に入るレベルの肉にするまで100%責任を持つから」

田川「獲った鹿肉、すぐに冷凍車で持ってきて貰いますもんね。今まで聞いたことが無い!」

 「普通だと仕留めて30分くらい経つと4度は体温が上がるから、肉質への影響に差が出るよね」

田川「肉質、臭み、色も完璧なんですよ。だからうちが取引しているハンターさんは、地元のハンターさんと、五味さんだけです」

 「ありがたいことです、改めて」

ハンター 五味 舞

 「絶対に期待を裏切れない。初めて此処で鹿料理を食べた時の美味しさ、衝撃だったよ。田川さんの腕あってこそ」

田川「いや、たまにイノシシもあるけど、鹿肉の味付けは本当にベーシックなものなんですよ。五味さんに獲って頂くお肉は、そのものの風味まで楽しんでもらえるクオリティだから、余計な細工は必要ないんです」

 「ミートハンターの立場上、普段そんなにジビエは食べてこなかったんだけど…いつも食べるたびに驚いちゃう」

 「その土地の自然が生む良い肉、ハンターの腕、腕の立つシェフがタッグを組むと、それに勝るものはないんだっていう実感と手応え。田川さんと星のや富士さんとの縁でそれに気が付かせてもらったことは、大きい感謝だよ」

出会いから信頼へ
縁が育むストーリー

舞さん自身もハンターの資格を取得したことで、夫婦としての絆にハンターとしてのパートナーシップが加わった。そこに、「地域ならではの美しさだけではなく、体験を提供する」リゾート業界のトップブランド、星のや。
ビジネスを形成する絶妙なコンビネーションは、最高なコミュニケーションから生まれているようだ。

 「最初に田川さんにあった時、私はまだハンターの資格は持っていなかったよね?」

田川「そうそう。だからある日 “嫁もハンターになったから” なんて誠さんから聞いて、驚いたのなんの。初めて五味製作所〔誠さんが経営するダイキャスト部品メーカー〕に挨拶にお邪魔した時、“事務を担当するキレイな奥さん”って感じだったので〔笑〕」

 「星のや富士さんの開業に合わせて田川さんが軽井沢から移った時だったかな」

田川「地元食材を使って、料理でも各地のストーリーを体感して、心も体も最大限リフレッシュしてもらうことがグループのコンセプトなので、五味さんとの出会いはすごく大きかった。同僚が五味さん夫婦と仲が良かったっていうのもあるし、そこからすぐ仲良くなりましたよね」

 「第一印象はどんな感じだったの?」

 「まあ、イケメンだな、と」

田川「まあ、美女と野じゅ…イケメンだな、と」

〔一同爆笑〕

田川「僕なんて新参者でしたからね。それはそれは誠さんにいじめられましたよ」

 「よく言うよ〔笑〕」

田川「冗談抜きにして、最近やっとジビエっていうキーワードが世間に認知されてきたわけですが、このムーブメントがくるかなり前からもハンターとしての誠さんの考え方と技術は確立されていましたよね。そこも凄い尊敬します」

 「ジビエの醍醐味や美味しさをしっかり伝えたい、って気持ちはハンターを始めた当初からあったんだけど、やっと世間にも認知されてきたことは嬉しいよねぇ」

田川「ハンターのキャリアのスタートって、お父さんの影響が大きいんですか?」

 「そう。僕の父が峡北地区の猟友会の会長やっているっていうのもあって。山梨県内の3分の2の鹿が駆除されているのが峡北。そんなところで育ったっていうのも縁といえば縁だよね」

 「ここまで本格的にやることになったのは、地元に食肉処理施設が無かったっていうのも大きかったんじゃないかな。施設が無いから、獲った鹿たちは埋没処理していたし…。折角のお肉が勿体無いし、いくら獣害が年々に深刻になっているとは言っても、可哀想なところもあったの」

田川「あぁ、なるほど。じゃあそこから地域の役場などの協力もあって初めての施設ができて、本格的にハンター業も活発になってきた、という」

 「それがちょっと違うんだよ。行政や議員さんに峡北初の食肉処理施設を作ってくれ、ってなんどもなんどもアプローチしていたんだけど、結局それが実らなかった」

田川「えっ、それじゃあ今の処理施設ってまさか自分たちで?」

 「その通り。明野の旧給食センターが北杜市の合併の関係で借りられるって聞いたから、これはチャンスだ、と。そのままトントン拍子で処理施設としてオープンするまで進んだ」

 「借りたはいいけど、最初は中に何も無かったんだよね」

 「そう、有限会社五味製作所で施設を借り受けて、ジビエの処理も自社で行う、っていう流れになったわけです」

田川「そうだったんですね。そのアクションが無かったら、星のや富士でジビエを出すことは無かったかも知れないと考えると…世の中って本当に人の縁でできているって感慨深くなってしまいますね」

ジビエのこれから
それぞれの願い

 「正直なところ、今100人がジビエを食べて、全員が“美味しい!”って言うことは少ないと思うんだけど、どう思います?」

田川「実際、それは正解だと思う。ハンターや処理場、料理人の腕によってかなり左右されてしまうところがあるから…。他のメジャーな食肉と違って、まだまだ醸成されていない部分があるからね」

 「そう、実はそれほど良いジビエはまだ世の中に出回っていないと思うんだ。本当の自然の美味しさを知っている人は少ないんじゃないか、って。これは失礼な言い方かも知れないけれど、B級のハンターもいれば、B級の料理人もいる現実があるわけでしょ。ハンターの立場としては、そのプロセスを少しでも各地域で質を上げていき、ジビエの本当の美味しさが世間に伝わっていって欲しい」

 「獲る側も、調理する側もレベルを上げることで、ジビエの全体的なイメージもさらに良くなりそうだよね。その点、星のや富士さんはトップレベルだから凄い。私たちとのコンビネーションってとっても素敵なことだと思うし、職業ハンターとして冥利に尽きることだよね」

田川「うん、調理人・料理人である僕の立場からしてももちろん同じ想い。星のや富士のシェフとして誇りを持っているし、五味さんのような方たちと山梨ならではのブランド食材でストーリーを伝えていきたいなぁ。良い環境で生まれた食材を、然るべき人が獲って、然るべきところが料理にして伝えていく。もうそれだけで十分にブランドと言えるんじゃないかな、って思うんです」

山梨県でも、ジビエの認証がスタートしたことで、今後はメイドイン山梨というブランド価値が高まっていきそうだ。県内に留まらず、全国に拡まっていくことが期待されている。
そして、大胆なように見えて繊細なジビエ素材を巧みに演出して伝えていこうとした「星のや富士」の目の付け所も素晴らしい。

 「星のや富士さんでも、本当に素敵なお料理にして貰っているけど、うちもお肉を一般直売しているの。扱いずらいと思われていたジビエでも、主婦の方からも評判が良くて。そういうところも嬉しい。少しはイメージアップに貢献出来ているんじゃないかな、って」

田川「うーん、僕は星のや富士のシェフとして責任と誇りを持って毎日調理場に立っているけど、さっきも言った通り五味さんのところのお肉には本当にベーシックな味付け処理しかしないんです。食材が素晴らしいから、変に手を加えなくても美味しい料理になってくれる。ソースも上にかけず、添えるだけ、っていう場合が多い」

 「星のや富士さんのお客さまは、首都圏や県外の方に加えて最近は海外の方も多いでしょ。山梨のジビエが世界に拡がってくれたら本望だなぁ。富士五湖エリアと峡北エリアじゃ環境も違うから、獲れる鹿肉にもバリエーションがあって面白いし、それも楽しんで貰いたい」

 「田川さん、今度お休みの時、私たちの現場の山に来てみない?」

田川「それはいいアイデア!」

 「普段は何キロもする銃を持って道なき道や、急斜面を獲物目掛けて猛ダッシュしてるからね。確かにどんなところで普段狩りをしているか見てほしいな。ついでだから本番を想定して、田川さんにも急斜面ダッシュしてもらおうかな〔笑〕」

田川「う、覚悟しておきます〔笑〕」

星のや富士

2015年10月30日に開業した日本初のグランピングリゾート。河口湖にほど近い広大な森の中の施設で、快適な時間を過ごすことが出来る。リゾートでありながら、「グラマラス富士登山」「山麓の燻製づくり」など、季節に応じたラグジュアリーかつワイルドなアウトドア体験ができることもポイントだ。

客室数:40室
住所:山梨県南都留郡富士河口湖大石1408
アクセス:河口湖ICから車で約20分
URL:https://hoshinoya.com/

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