編集長の桃源郷家づくり日記その2

一宮に越して14年。空き家になっていた一軒家にひとりで住み始めて今では愛する妻とかわいい娘が二人、上の娘も来年中学生になる。元々借り住まいの気持ちで住み始めたが、周りの人たちの穏やかな人柄と春一面が桃の花に埋まるこの地がとても気にいっていた。ここなら一生住んでもいいなと思って大家さんに打診したところ、ご好意で先祖代々の地を僕に売ってくれることになった。「この土地を手放すならあなたみたいな方だといいなと思っていたところです」 ありがたいことである。たとえ他に良い地があったとしても、この14年間のお付き合いは手に入らないものである。
はじめはリフォームも考えたが、かなり現在の家はガタがきており戸もきっちり閉まらない部屋も昔の住宅(古民家ではない)なので継ぎ足し継ぎ足しで区切られていた。しかも道に面して西向きに建てられていたので、日当りが悪く、夏は涼しいが冬はとても寒い。僕の住みたい家のイメージも確立したので思い切って建て直すことにした。そして田中先生に連絡したのである。
僕の建てたい家のイメージを考えていたのであろう、短い沈黙の後に先生が尋ねてきた。
「鉄骨のローコスト住宅。それに茶室を付ける・・・・どのような茶室を考えているのですか?」
「茶室は、利休の待庵の空間でけをきっちり写していただき材質は問いません。ただ、寸法と光の入る向きはきっちり同じにしたいんです。」
「なるほど精神的な茶室ですね。でも奥さんは茶室をつくることは、よろしんですか?」
「お茶は主人が生きてきた証ですから」
「先生、見せかけの素材は使わずに、安くても正直な材料で家をつくりたいのです」
「わかりました。やってみましょう」
そんな風に田中先生に承諾を受け、早速設計に入ってもらうこととなった。そしてなによりも家族が僕の生き方を認めてくれていることがうれしかった。

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